冬季うつ病のお話

~季節性感情障害(SAD)~

 季節性感情障害(SAD)は、季節の変わり目など、特定の季節が原因となって繰り返されるうつ病のことです。

 

 ストレスとなる出来事がないにも関わらず、10月~3月の秋から冬にかけて症状が現れ、春先に症状が改善するものを「冬季うつ病」と言います。

 

 「気分が落ち込む」「やる気がでない」「イライラする」「ものごとが楽しめない」「人と会うのが億劫になる」など精神面での不調の他、「どれだけ寝ても眠い」「睡眠時間がいつもより長くなる」過眠や、「甘いものや炭水化物を無性に食べたくなる」過食の傾向などの生活の変化が現れてきます。

 

 過眠の症状では、夜眠る時間が長くなるだけではなく、日中の眠気を感じるようになるようです。

 

 過食の症状では、パン、パスタ、チョコレート、クッキーなど糖質を多く含む食品を好んで摂取するようになります。

 

 過眠で活動量が減り、過食による摂取カロリーの増加で、体重が増加することもあるようです。

 

 「冬季うつ病」の原因は、まだ明確に判明していませんが、一説には「日照時間の減少」ではないかと言われています。

 

 私たちは、太陽の光を浴びることで、幸せホルモンと呼ばれている「セロトニン」を分泌し、精神状態のバランスを保っています。

 しかし、日照時間が減少すると、太陽の光を十分に浴びることが出来なくなり、セロトニンの分泌量が不足し、不安な気持ちが強くなり、イライラするなど、精神状態のバランスが乱れると考えられています。

 また、「セロトニン」は自然な眠りを誘う作用がある「メラトニン(睡眠ホルモン)」の原料でもあるため、日照時間が少ない冬は「メラトニン」を十分に作ることが出来なくなるため、睡眠の質が低下し、「いくら寝ても寝足りない」「ダラダラと寝る時間が増えて、睡眠時間がいつもより長くなる」など体調の不良につながっていくようです。

 

 「過食傾向」、「体重増加」、「過眠傾向」、「秋から冬にかけて発症し、春になると症状が治まるサイクルを繰り返す」などが、「冬季うつ病」の特徴的な症状のようです。

 

 それでは、「冬季うつ病」にならない、悪化させないためには、どうしたら良いでしょうか。

 

 まずは、日照不足の解消のために、太陽の光を浴びるようにしましょう。

 朝起きてすぐに、寝室のカーテンを開けて、太陽の光を浴びる、電車やバスでは窓際に座るなども効果的です。

 毎日、できるだけ決まった時間に寝て、決まった時間に起きるというサイクルを崩さずに、暴飲暴食を控えるなどの、規則正しい生活が大切です。

 短時間でもよいので、できるだけ歩くことは、「セロトニン」の分泌を促しますのでお勧めです。

 

 冬の寒い時期は、外出が億劫になりがちですが、通勤や買い物には、車を使わず、歩くことを心がけましょう。時には、遠回りをし、電車通勤の方は一駅手前で電車を降りて歩いてはいかがでしょうか。

 外を歩くことは、太陽の光を浴びる機会が増え、心地よい疲れとメラトニンの生成を促すことになり、質の良い睡眠につながります。

 

 寒い時期は、寒さでからだの負担を感じやすくなります。「今日は少し無理をしたなあ」「疲れたなあ」と感じる時には、その日のうちに十分な休憩や睡眠をとりましょう。 連休や休暇がまとまって取れる時には、ついついスケジュールを詰め込みがちです。

 しかし、そういう時こそ、自宅でゆっくり過ごし、体力の回復に努めるようにしましょう。

 

 毎日のバランスの取れた食事も重要です。特に、「セロトニン」は体内で作られるホルモンのため、食材から補充することは難しいのですが、その生成に必要な「トリプトファン」を多く含む食材を摂ることで、「セロトニン」の生成を増やすことができます。

 「トリプトファン」が多く含まれる食材には、豆腐、納豆、味噌などの大豆製品、チーズやヨーグルト、牛乳などの乳製品、バナナ、卵、肉、魚などがあります。

 特に青魚の脂には「セロトニン」を活性化させる作用があります。

 「まぐろ」や「かつお」には豊富な「トリプトファン」が含まれていますので、できるだけ積極的に摂るようにしましょう。

 

 みなさま、いかがだったでしょうか。

 もしも辛い症状が続く場合は、お1人で抱え込まず、できるだけ早く、かかりつけの先生や心療内科の先生にご相談することをお勧めします。